入学式の日。一番前の列の左から4番目が私。
長田先生は、ほんわかした雰囲気でクラスの全員に分け隔てなく優しかった。不安がいっぱいの小学校1年生にとって、長田先生以上に理想の先生はいなかったと思う。
錦糸小学校は、家から歩いていくと、子どもの足でだいたい15分くらいだった。途中に錦糸町駅や楽天地、映画館といった繁華街がある。大人向けのきわどい映画の絵が大きく飾られていたりして、今思えば子どもの通学路には一番適さない場所だったと思う。
先日、池袋を歩いていた時、突然大人にまぎれてランドセルをしょった女の子が現れた。私立ではなく公立の小学校の雰囲気だった。その時「何故こんなところに小学生が?」と驚いたのだが、きっと私も小学生の時、そう思われていたのだと思う。自分ではまったく当たり前に通学をしていた。ただ今と違って子どもの数も多かったから、今の都会よりは「通学路」という雰囲気はあったのかもしれない。
楽天地の一角に、ジュースの自動販売機があったのを覚えている。缶ジュースではなく、10円を入れると紙コップにジュースが注がれるタイプだった。機械の上の部分が噴水のようになっていて、いつもジュースが循環して流れていた。販売機にはグレープとオレンジの2台があった。私たち小学生は、ジュースが出てくる注ぎ口の部分に指を入れて、少し残っている液体をなめたりしていた。
錦糸小学校の校庭はコンクリートでできていた。たしか1年生の夏休みに、工事が行われてコンクリートからアスファルトに変わった。ねずみ色だった校庭が、緑色に変わり、ラインなどもカラフルで楽しい雰囲気になったのを覚えている。
たしか幼稚園の校庭もねずみ色のコンクリートでできていた。だから学校の校庭というものはコンクリートかアスファルトで出来ているものだとばかり思っていた。もう少し大きくなって、実は日本国内では土で出来ている校庭の方が多いのだと気付いた。
同じクラスの友達のお父さんは、商売をやっている人が多かった。バー、肉の卸売り、雷おこしの製造販売など。そういう商売をやっている友達の家に遊びに行くのは本当に面白かった。(つづく)