遠足に行った日。
2列目の向かって右から4番目が私。
2列目の向かって右から4番目が私。
昔、昔、昭和の小学生の男の子たちは、みんな自分のひいきの野球チームの帽子をかぶっていた。上の写真を見ると、いかにも「昭和だなぁ」と思う。ズボンの丈も、今の小学生と違って短い。
ちなみに前回の話で「悪ガキ」として登場した永岡有二くんは、2列目の向かって右から2番目に写っている。元気なスマイルに悪ガキ感がにじみ出ている。
しかし小学生の男の子というのは、基本的にみんな元気で、しょうもない生き物である。だから4年1組でも、永岡くん以外の男の子たちもけっこう元気で、いつも楽しそうにふざけていた。
この写真の遠足の日も、私たちクラスの皆は、気分が高ぶって、いつもよりもはしゃいで大声を出したり、ふざけたりしていた。
朝、クラスメイトたちは、リュックサックと水筒を下げ、先生に「おはようございます!」と元気に明るく挨拶をして、教室に集まってきた。
米本達郎くん(仮名)は、成績のよい生徒だったけれど、頭の回転が早く機転が利くので、いつもジョークを言ってふざけている男の子だった。その米本くんは、教室に入って来た時に、「おはようございます」ではなく、満面の笑みで「さようなら!」と大声で言った。するとクラスのみんながどっと笑い転げたのだった。私もそのふざけた感じと、言葉のギャップがおかしくて大声で笑った。
しかし真面目なS先生だけは違った。米本くんのふざけた感じが気に入らなかったのか、「さようなら、と言うなら、このまま帰りなさい!」と真顔で米本くんを叱ったのだった。
教室の中には、急にピリッとした空気が漂った。米本くんは帰らなかったけれど、それまでのふざけた感じが止まり、急におとなしくなってしまった。少々気の毒な感じもした。
S先生は日頃から、ふざけたり、大声を出したりして目立とうとする生徒があまり好きではなかったように思う。ふざけて目立つ生徒だけではなく、勉強ができて目立つ生徒にもS先生は厳しかった。「いい気になっていると、そのうちに痛い目に遭うから気を付けるように」というような、教訓めいたことをいつも話していた。
たしかにそれは、これから大人になっていく中で、役に立つ処世術だったかもしれない。遠足の朝も、ふざけている生徒たちを安全に引率するためには、少々厳しくすることも必要だったのかもしれない。
ところで米本くんだが、彼は今では立派な商社マンになって世界を渡り歩いている。同窓会にも忙しいスケジュールを調整して来てくれる。あの遠足の日の思い出を、自ら話題にし、「ほんとにあの時はビビったよ~」と、面白おかしく話してくれる笑顔は、小学校4年生の時から変わっていない。
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