ちっちゃんと私。
修学旅行の時。
だいたいいつも二人一緒でした。
同じマンションに住んでいたその男の子たちの家には放課後よくみんなで遊びに行った。一人の男の子のお父さんはベース(横須賀米軍基地)に勤めていたので、開放日にはお父さんが6人をベースに連れて行ってくれたりもした。
その6人の中では「〇〇が△△のこと好きだって」という話は一切出なかったし、恋愛感情もなかったと思う。しかし何となくグループ交際をしている気分にはなっていたかもしれない。
年が明けて昭和52年の2月のこと。私たちはテレビのコマーシャルで「バレンタインデー」なるものを知った。
そしてある日、学校の帰り道でちっちゃんから
「ねぇねぇ、今度バレンタインデーに、あの4人にチョコレートあげない? 私たち2人からってことで」
と提案があった。
ちっちゃんは小さくてまだ色気も何もなかったけれど、写真でもわかるようにとてもかわいらしく、活発で積極的な女の子だった。私と同じように楽しいことが大好きだった。
「うん、面白そう、あげようあげよう!」
私はすぐに賛成をした。
数日後の2月14日月曜日の放課後、私たちはお小遣いを出し合ってお菓子屋で「不二家ハートチョコレート」を4つ買った。当時は1つ50円だったので、それぞれ100円ずつを出し合った。
プレゼント用のラッピングをしてもらったかどうかは全く覚えていない。もしかしたらラッピングは一切なかったかもしれない。
それに一人一人にどうやって手渡したのかも覚えていない。たぶん4人の家に直接2人で訪ねて行って、ただ「はいっ」と手渡しをしたような気がする。男の子の方も普通に「ありがとう」ともらってくれたように思う。
特に好きだとか告白するという目的はなかったので、ドキドキもしなかった。けれど私たちは何となくウキウキ楽しかった。あれはまぎれもなく「人生最初の」バレンタインデーだった。そして人生で一番純粋でかわいらしいバレンタインデーだったと思う。
今回この話を掲載するにあたって、ちっちゃんに「載せてもいい?」と一応許可をもらったのだが、ちっちゃんは「え、そんなことあった?」とすっかり忘れていた。「不二家のハートチョコレート」の名前を出したら「そういえばそんなことあったかも。うっすらと思い出してきた」とのことだった。
何しろ42年も前のことだから忘れていても不思議ではない。渡した4人の男子も忘れているかもしれない。いや、私のこの記憶自体が正しいのかどうか。本当にあったことなのかもあやしい。
そんなわけで、いつもは本名に基づいた仮名でお話を書いているけれど、今回はその4人が誰だったのか、同級生にも判らないよう仮名も出さないようにしておこうと思う。
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