初夏のある日、観音崎で。
左から、私、山下さん、ちっちゃん、マコちゃん、朝美さん。
マコちゃんは、よく私たちの名前に「ブー」を付けて呼んでいた。「としこブー」とか「朝美ブー」、「奥田ブー」という感じで、とても大きな声で元気よく呼ぶのだった。
ちっちゃんとは「てめー!」と男の子のように呼び合っていて、そのうちにお互いを「てめーともだち~」と呼称するようになっていた。
そのような元気な面もありつつ、前回書いたように、写真を撮る時に手をつないできたりして、かわいらしい面もあった。
マコちゃんのことで忘れられない出来事がある。あれは夏休みが明けた2学期の登校日初日、昭和50年9月1日月曜日のことだった。
私は久しぶりにクラスメイトたちと会えることを楽しみにして小学校へ行った。しかしマコちゃんと顔を合わせた瞬間、私はその変貌ぶりに言葉を失ってしまった。蜂にでも刺されたのだろうか、顔がはれ、目がつりあがって、全くの別人のような顔になっていたのだった。
今の私だったら「どうしたの?」と普通に聞けるけれど、その時は何と言葉を発していいのか全く分からず、何もなかったように急いで目をそらしただけだった。
マコちゃんは顔を隠すわけでもなく、普通に笑みをたたえていた。けれど何も言葉は発しなかった。気軽に「蜂にさされちゃって~」などと説明があるわけでもなかった。笑顔は作っていたけれど、心の中は必死だったのだと思う。
私たち生徒は、席についてS先生が来るのを待っていた。マコちゃんは私の前の席に座っていた。するとマコちゃんのななめ前に座っていた男子(誰だったかは覚えていない)が、マコちゃんに何か話掛けたようだった。何を言ったのかは聞こえなかったが、その瞬間、マコちゃんは突然大きな声でわんわん泣き始めたのだった。きっと顔のことを何か言われたのだろう。私はどうしていいかわからず、ただマコちゃんが大きな声で泣くのを聞いていた。
その日は始業式だったので、学校は午前中だけだった。私は家に帰ってからもマコちゃんのことが頭から離れなかった。
「いったいなぜ顔が腫れていたのだろう。ずっとあのままの顔だったらどうしよう」。
あの日の衝撃は、私の10年間の人生の中で、1.2を争うくらいの大きな出来事だった。
しかし翌日学校に行ってみると、マコちゃんの顔はいつも通りの顔に戻っていて、キャラクターもまた男の子のように元気なマコちゃんに戻っていた。
私はほっとしたけれど、一体あれは何だったのだろう。蜂にさされたのでは、と思っていたけれど、本当のところはわからない。
結局今となっては、あの時の理由をマコちゃん本人から聞くことは、永遠に出来なくなってしまった(つづく)。
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