音楽の時間。大だいこが私。
小だいこが大河内君。
私は一番前に座っているマコちゃんと目が合ってニッコリしている。
前回、弟は小1からずっとオールAだったという話をした。それに比べて私はいつも成績は中くらいでパッとしなかった。あまり「勉強をちゃんとがんばろう」という意識もなかった。音楽や図工も楽しむのは好きだけれど、何事も飽きっぽく、雑な感じだったと思う。
よく「新興住宅地の子どもは成績が良い」と言われる。望洋小学校も例にもれず、勉強のできる子が多かった。その中でもずば抜けて成績が良かったのが大河内将文君(仮名)だった。
大河内君は8年後に、予想通り国立のT京大学の理科二類に合格する秀才で、小4の時も常にテストは100点を取るのが当たり前だった。いい成績を取っても特に自慢するわけでもなく、いつも淡々としていた。中学生のお姉さんも秀才で、鎌倉にある横浜国立大の付属中学に行っているという噂だったから、きっと成績がいいことが当たり前の環境だったのだと思う。
彼は勉強だけではなくスポーツもできたし、性格も決して悪いわけではなかったのだが、担任のS先生にはあまり好かれていなかった記憶がある。S先生は大河内君に対して「勉強ができるからといっていい気になるな」的な発言をよくしていた。今どきの「褒めて伸ばす」教育とは正反対の方針だった。
とにかくS先生は目立つ生徒が嫌いだった。逆に私のような中途半端なぼんやりした生徒のことをよく褒めた。
「としこさんは明るいし、楽しいし、性格がいい」
というような誉め言葉をよくかけてくれた。本当に性格が良かったのかどうかは定かではない。単にS先生の好みの問題だったと思う。概して女の子、そして弱い子などには優しいS先生であった。決して悪い先生ではなかった。
そんな中途半端な私が、一度だけ大河内君と成績を争ったことがある。
小4のクラスでは、一時期、毎朝「漢字テストの時間」というのがあった。漢字ドリルを使って毎日10問ずつテストを行い、それが1クール20回くらい続く。1年で2~3クールくらい繰り返されただろうか。前日に範囲が出題されるので、きちんと予習をしていけば満点が取れるのだが、予習をしても小さいミスをしてしまったりで、20回全て満点を取るのは難しかった。
基本的にうちの母は、子どもたちの勉強にはノータッチだったけれど、なぜかこの漢字テストの時だけは毎日勉強に付き合ってくれた。家に帰ってから翌日の範囲を何度も練習し、翌朝学校に行く前に模擬テストをし、母が採点をしてくれる。私も国語だけは嫌いではなかったので、その時は集中して漢字の勉強を続けることができた。(つづく)
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