男の子同士のプライドとか友情って、何だかかわいい、と思う。
引っ越しが決まると、弟は他にも友達からたくさんプレゼントをもらっていたようである。私が一番印象に残っているのは「光る泥だんご」だった。
小さい頃、泥だんごづくりにはまった人も多いと思う。公園の単なるそのへんの泥を固めて、乾かして、磨いていくと、最後には鉄の玉のような硬くてピカピカの球形になる。乾かしたりする時間も必要なので、制作には数日かかることもある。
泥だんご作りは、一般的に年齢が上になればなるほど熟練の技を習得できる。だから自分より年上の子が作った泥だんごは、大きかったり、硬かったり、ピカピカだったりして、尊敬の対象でもあった。男の子たちは自分の作った泥だんごを友達の物とぶつけ合って、どちらが硬くて強いか競い合ったりもする。勝負に勝った強くて美しい泥だんごは、自分の価値の証でもある。子どもはそれを箱に入れて宝石のように大切に保管していた。
引っ越しが近づいたある日、弟は家に帰って来ると、何やら見慣れない箱を手にしていた。
「その箱なあに?」
「泥だんご、もらった」
弟は無造作に箱をテーブルの上に置いて、また外に遊びに行ってしまった。箱を開けると、やや小ぶりだが、とても硬そうな、まるで鉄のようなピカピカ光る泥だんごが1つ入っていた。あとで聞くと、公園で知り合った小学校高学年の男の子が、引っ越しのお別れ、友情のしるしとして弟にプレゼントしたとのことだった。
その泥だんごが入った箱は、横須賀に引っ越してからもしばらく弟の机の棚に大切に保管されていた。たまに箱を開けると、泥だんごの状態は全く変わらず、硬そうにピカピカ光り輝いていた。
今はあの泥だんご、どこに行ってしまったのだろう。まだ実家にあるのだろうか。
下の写真、こちらは女の子同士の友情である。左から、じゅんくんの妹のひとみちゃん、さくらちゃん、私。
ひとみちゃんが左手に持っている手提げみたいなのは、おさげ髪の女の子の顔になっている。ヤシの実をくりぬいてつくってあり、頭のところでパカっと蓋が開くようになっている。私が小さい頃、父から小笠原のお土産としてもらったものを、ひとみちゃんに譲ったのだと思う。最初、中には木の実と皮で作られたシャカシャカしたオレンジっぽいネックレスが入っていたことを覚えている。
女の子3人と、弟と、じゅんくん。私たち5人は、友情というよりも、本当のきょうだいのようにいつも一緒にいるのが当たり前だった。だから引っ越しをしてしまうのは、とてもさびしく、悲しい出来事でもあった。(つづく)
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