男の子同士、じゅんくんと弟は本当の兄弟のようでした。
赤ちゃんの頃から私にいつもくっついていた弟も、幼稚園に入るとだんだんと男の子らしくなって、遊ぶ相手も変わっていった。一番の仲良しは隣に住んでいたじゅんくん。じゅんくんは弟より2歳上の昭和41年生まれ。本当の兄と弟のようにいつもつるんで遊んでいたことを思い出す。
男の子の友人関係は、女の子の私には理解不能だった。何となく軍隊のように序列があって、じゅんくんと弟には主従があるように見えた。あらためて写真を見ると、じゅんくんはちょっと反抗的で年下の男の子があこがれるようなニヒルな風情がある。彼は運動神経が良く、すばしっこい男の子だった。錦糸堀公園やビルの屋上を縦横無尽に駆け回るじゅんくん。小さい時の2歳の違いは大きい。弟もじゅんくんに置いていかれないよう、いつも全力疾走でくっついて遊んでいた。
男の子たちは勝負が大好き。ある日、ビルの階段の何段目から飛び降りることができるか競争になった。もちろん年上のじゅんくんの方が高い所から飛び降りることができる。しかし負けず嫌いの弟は、じゅんくんに負けまいと実力以上の無理をして、結局またケガをして帰ってきた。何度ケガをしても懲りない弟だった。
じゅんくんと弟には、他にも多くの男友達がいた。同じビルの別な階に住む、私と同級生の栄一くんとか、公園の横にある食堂の息子の和弘くんなど。小学校高学年の男の子たちともいつの間にか友達になって、よく公園で野球などをして遊んでいた。(ちなみに栄一くんの妹は、弟と同じ幼稚園に通っていたマリコちゃん。たぶん弟の初恋の人)
じゅんくんと弟は、もう少し年上の人たち、大人ともよく友達になった。ある頃から、弟は私と母に「ウルトラマンのおっちゃんが…」とよく言うようになった。「ウルトラマンのおっちゃん?何それ」と最初は理解できない私と母であった。
しかしある日、錦糸堀公園で弟とじゅんくんが、モヒカン刈りの怖そうな青年と、笑い転げながら会話をしている姿を見かけた。何とそれが弟の言う「ウルトラマンのおっちゃん」だったのだ。
モヒカン刈りのその青年は、公園横のバーで働いているようだった。まだ夜にならない夕方、開店の準備をしている時に、弟たちは会話を交わすようになったらしい。強面にモヒカン頭。堅気の大人たちなら絶対に近寄れない部類の若者だったが、無邪気な弟たちはいつも笑い転げながらその若者と会話をしていた。きっとその若者もやんちゃな子どもたちと会話ができて嬉しかったのだと思う。いつも面白いギャグのようなセリフで弟たちの相手をしてあげていた。
50歳になった弟は、今でも人懐っこくて、どんな部類の人たちとも仲良くできるところは変わっていない。じゅんくんは25歳の時に病気で還らぬ人となった。じゅんくんは今、天国でどんな52歳になっていることだろう。
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