2018年11月16日金曜日
32.ケガばかりしていた弟
私たち世代は、月光仮面のテレビ番組をリアルタイムで見ていない。たぶん10歳くらい上の世代の人たちの番組だと思う。この写真は子どもの国かどこかで撮影したと思う。遊びに行ったら、たまたま月光仮面と一緒に無料で記念撮影ができるということで、沢山の子どもたちが列をなして並んでいたことを覚えている。
弟は月光仮面と一緒で少し緊張気味。弟の胸についているワッペンは、札幌オリンピックのジャンプの絵柄が入っている。1972年に撮影されたものだと思う。この年に、うちではやっとカラーテレビを買っている。
この頃、弟はまだ幼稚園に入る前で4歳くらいだと思う。男の子ならみんなそうだと思うけれど、本当にやんちゃでケガばかりして母を心配させていた。
ある日のこと、私が小学校から帰ってきたら、いつもはお昼寝しない弟が布団の上で寝ていた。顔をのぞきこんだら、鼻の下が別人のように腫れあがってむらさき色になっていた。母に聞くと「錦糸堀公園でブランコを漕ぎすぎて後ろに落ちてしまい、柵に上あごの部分を打ち付けた」ということだった。月光仮面だか仮面ライダーにでもなったつもりでジャンプしたのかもしれない。ブランコの一番上から落ちたそうで、相当の衝撃だったと思う。
落ちた瞬間、弟はしばらく動かなかったため、母もパニックになってしまったらしい。親切な人が「救急車を呼びましょうか」と声をかけてくれた。弟と同じくらいの女の子を連れたそのお母さんは、タオルを水で冷やして持ってきてくれた。母は声をかけてもらったおかげで「そうだ、すぐ宇野先生に連れて行こう」と我に返った。
宇野先生というのは、うちのビルの3階にある「宇野内科」のことである。10階建てのビルは、3階まで会社のオフィス、病院などが入っている、いわゆる「下駄ばき」ビルだった。3階に「宇野内科」があって、風邪をひいたときなどはいつもお世話になっていた。その日もすぐに宇野先生に連れて行って手当をしてもらった。先生は「上あごで本当によかった。少しずれていて、喉か鼻を打っていたら(命が)危なかったかもしれない」と言ったそうである。母は「本当に良かった」と泣きながら私に説明した。
しかし弟は直後も意外と元気だった。私が帰って来る前、宇野先生で診察をしてもらった後に、母は買い物に行かなくてはならなかったので、弟を寝かせてから30分程度外に出て帰ってきたら、弟は家にいなかったらしい。あわてて探してみたらビルの屋上で、ゆかたの裾をヒラヒラさせながら隣のじゅんくんと駆け回っていたそうである。結局数日後には顔の腫れも取れて、いつもの顔に戻った。
弟はもう少し小さい頃にも、ケガとは少し違うけれど、病院のお世話になった出来事があった。ある日、父が弟を「高い、高ーい」と抱き上げたところ、鼻の中で何かがキラッと光った。よく見ると私のおもちゃのネックレスに使われていたピンク色のパール玉だった。いつの間にか鼻の中に詰めてしまったらしい。中にあるのは見えるのだけれど、それを取り出そうとしてもかなり奥の方にあって取ることができない。
仕方なく耳鼻科に行って取り出してもらった。先生によると「ずいぶん長い間、入っていたようです」とのことだった。パールの玉が少々変質していたらしい。しかし弟は一切自分からは何も言わず、毎日いつもどおり過ごしていたのだから笑ってしまう。
けっこう子どもは、鼻や耳にピーナッツやレゴなどの異物を詰めてしまうことはあると聞く。これを読んで「そんなこと、うちにもあったなぁ」と懐かしく思い出したりしている人がいるかもしれない。
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