住んでいたビルの屋上で。
さくらちゃん、私、弟。
さいちゃんの家が経営している「バードリーム」のように、錦糸町には飲み屋さんが非常にたくさんあった。
うちの母は、錦糸町に住み始めた頃、夜中の1時ごろにふと目覚めると、いつも外から「サーッ、サーッ」と水の流れるような音が聞こえてくるので不思議に思っていたらしい。それもかなりの大きな音で、継続して聞こえるわけではなく、数分間隔が空いて何度も聞こえてくるらしかった。ベランダに出てみると、それはバーのお客さんたちが、タクシーに乗って帰る音だった。
上の写真でもすでに大都会、繁華街だった錦糸町の雰囲気が伝わってくると思う。富士銀行、ロッテ会館、楽天地の看板も見える。もう富士銀行は銀行自体なくなったし、ロッテ会館も楽天地も新しい建物に建て替わっている。隔世の感がある。
写真に写っているロッテ会館は、昭和45年に建ったので、まだ私が小学校に入ったばかりの頃は新品のピカピカ、最新式の建物だった。工事をしていた時のことも記憶に残っている。それが2007年には今の新しいホテル複合型施設に建て替えられてしまった。私にとってはさびしい出来事であるが、30年以上経過していたのだから、商業施設としては仕方がなかったのかもしれない。
旧ロッテ会館が昭和45年に建設されてから数年後、ロッテ会館の近く、国鉄の高架下に「ロッテリア」がオープンした。ロッテリアは私にとって、生まれて初めて見るファストフード店だった。それは錦糸小学校に行く通学路の途中にあったので、毎日のように「入ってみたいなぁ」と眺めながら通っていた。オレンジ色を基調にした看板に、かわいいアニメ風の羊さんが前足で立ってジャンプしているような絵をしっかりと覚えている。「ロッテリアのハンバーガーってどんな味だろう」。私をはじめ、まわりの子どもたちは一度は食べてみたくて仕方がなかった。しかし私は高いと思ったので母に「食べてみたい」と言うことはできなかった。言っても絶対却下されるだろうと思っていた。ロッテリアができてからしばらくは、同級生からも近所の子どもたちからも、ロッテリアに行った、という話は聞かなかった。たぶんみんな私と似たような状況だったと思う。
食べたいのだけれど、食べられない。そのような時、人はイソップ童話にある「酸っぱいブドウ」のキツネさんのような心理になるのだと思う。同級生の誰かが「あそこの店のハンバーガーは猫の肉でできているんだってさ」と教えてくれた。その頃は「えーっ本当?」と信じ込んでいたけれど、そんなことはデマに決まっている。
友人と昔話をしていると、他の地域、他のハンバーガー屋さんにも同じようなデマはあったらしい。お店の人には申し訳ないけれど、今となってはそのようなデマでも昭和の香りのする、懐かしい思い出である。
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