2018年9月27日木曜日

10.小笠原出身の父


 写真の中央で抱っこされているのは、3歳の私である。抱っこしているのは私の叔母、父の妹である。この時母は弟が生まれる直前で、家で留守番をしていた。
 昭和43年、小笠原諸島は日本に返還され、やっと日本人も上陸することが許されるようになった。小笠原出身の父は、この日、船で小笠原に出航した。昭和19年に本土に強制疎開させられてから24年ぶりの帰島だった。私や叔母たちは、父や叔父、祖母たちを見送りに港まで出掛けて行ったのだった。
 小笠原が返還されてから今年でちょうど50年。父がその時、どのような気持ちだったのか詳しく聞くこともなかった。もっと聞いておけばよかったのに、と他界してから後悔しても遅い。しかし断片的に聞いた話や歴史の資料から、ある程度分かることを次回は書きたいと思う。
 それにしてもこの写真、今あらためて見ると非常に昭和的というか、あの頃の空気感が如実に表れていて面白い。後ろに写る都バスの色、ピンポンパンのような帽子をかぶった男の子。教育ママ風のメガネをかけたおばさん。そして私の服は母のお手製。何気なく撮った写真でも、50年経つとそれなりに価値が出るものだと思う。(つづく)

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